近年、ヒト材料を用いた細胞治療は、ヒト疾患の治療において重要な分野として認識されています。特に幹細胞を用いた治療は新しいタイプの治療法として研究開発が展開されています。しかし、幹細胞に基づく組織再生療法の開発においては、患者さんへの投与後に治療用幹細胞の生着を長期間非侵襲的にインビボでモニタリングする臨床的方法がありません。非侵襲的イメージング法は、治療プロセスの有効性を監視するための有望かつ重要な技術で、機能検査と組み合わせることで、適応患者の判定、治療最適化、治療の有効性や耐性などの機構の解明にも役立ちます。

5年間の本プロジェクトにおいて、幹細胞の移植後の生着、免疫反応などのPETイメージング技術やMRIによる組織・生体高次機能やネットワークの評価、高密度モニタリング法の確立とデータベース化、多モダリティー高度画像解析技術の向上を推進します。幹細胞由来組織の持続性についての空間的および時間的ダイナミクスの長期・反復した非侵襲生体イメージング・モニタリングを可能にし、臨床的にトランスレータブルな標準化を進め、日・中・韓それぞれの研究者と協力することで幹細胞治療の実現化と医療水準の向上を図ります。

本提案により技術・研究の交流を強固なものとし国際的水準の高い研究技術成果を得ることで、日本独自の技術であるiPS細胞を安全・確実な細胞治療法として早期臨床応用・実現化する契機になると期待されます。このような細胞治療分子イメージングによる高精密モニタリング法は、同じく細胞を用いる治療であるがんの免疫療法にも適用でき、人工アジュバント細胞や免疫チェックポイント機構など、リンパ球の様々なサブタイプの活性や集積を追跡・可視化し、より確実な個別医療の達成が期待されます。